米Microsoftは現地時間2020年1月15日、Chromiumベースの「Microsoft Edge」の正式版をリリースしました。
(関連ニュース)Windows版とともに、Mac版も同時にリリースされ、ダウンロードして利用できます。
Edgeの新機能やセットアップなどについては
こことか
ここあたりの記事を参照していただくとして(手抜き)、本エントリーではMacをVoiceoverで使っているユーザーとして、スクリーンリーダー環境におけるEdge正式版の第一印象や使い勝手の感想などを書いてみたいと思います。
実際のところ、VoiceoverユーザーにとってWebブラウザは最も利用するアプリだけに選定に悩むところです。筆者の環境だけという可能性はありますが、CatalinaにアップデートしたところSafariはVoiceover環境で不具合が頻発、Chromeはどんどん動作が重くなり、騙し騙し日々Mac生活を過ごしているというのが現状なのです。ちなみにFirefox、Voiceoverで使ってる型いらっしゃいますかね? まともに使える印象がないのですが……。
さて新しいEdgeはChromiumベースということで、ある程度クオリティは予想できますが(一応開発版も使っていましたし)、果たしてどこまでVoiceoverで実用的なものに仕上がっているのか気になります。とりあえずリリースから一週間ほど使ってみましたのです。
なおこの記事で使用したEdgeのバージョンは79.0.309.71、macOSのバージョンは10.15.2です。
Voiceover使用時のパフォーマンスは?
EdgeをVoiceoverで操作するにあたり、まずウィンドウのナビゲーション階層を確認しておきましょう。階層の行き来は「VO+Shift+上下矢印」ですよ。
1.Microsoft Edge グループ
2-1.タブバー:タブの管理をします。
2-2.アプリバー:アドレス、ナビゲーション、Edgeの各種機能へアクセスします。
2-3.お気に入りバー:登録したお気に入りへアクセスできます。
2-4.Webコンテンツ:Webコンテンツが表示されます。
という感じで結構シンプルです。SafariやChromeと比べるとUIは整理されているという印象。音声読み上げや翻訳など臨時的にポップアップするツールウィンドウはありますが、基本的にタブバーとアプリバー、Webコンテンツを中心に操作するので迷うことは少ないでしょう。また、お気に入りバーを使用しないのであれば「表示」メニューから無効にすることができます。
基本的なショートカットキーは、SafariやChromeと共通のものが使用できるので、これらのブラウザを使っているなら操作にはほぼ違和感がありません。パフォーマンスもSafariやChromeと比べると気持ち軽快な気がします。特にWebコンテンツのレンダリングはChromeよりも明らかに高速。低スペックマシンを使ってる筆者のような環境では超重要なポイントです。でもそのうち重くなるのかなあ。
Voiceoverの読み上げは概ね良好ですが、テキストフィールドやコンボボックスにカーソルが当たった時に効果音が再生されない、ショートカットメニュー(VO+Shift+"M")を開いた時に項目数を読み上げない、アドレスバーから検索ワードやURLを入力した時などWebコンテンツにフォーカスが移動しない場合があるなど細かい部分で気になるところがありました。
ただいずれも慣れれば支障はありませんし、そのうち改善されるでしょう。
Safariのように特定のページでフリーズしたり、テキストフィールドに日本語を入力するたびに「選択項目が置き換えられました」と連呼したりしないので快適です。
自動翻訳機能が超絶便利。
Edgeには翻訳機能も標準搭載されています。
Webを表示させたらアプリバーの「翻訳オプションの表示」をクリックし、「翻訳」ボタンでWeb全体を翻訳します。基本的に言語は自動判別されますが手動で設定することもできます。
翻訳の品質はなかなか良好。おそらくMicrosoftの翻訳エンジンを使っていると思うのですが、Google翻訳と比べても遜色のない自然で読みやすい訳文が表示されます。
翻訳オプションから「元の言語に戻す」をクリックすれば原文表示に戻ります。
さらにEdgeの翻訳機能には、英語ページを読み込んだ時、自動的に翻訳してくれる機能があり、これがとっても便利。翻訳オプションにある「英語 のページを常に翻訳する」にチェックを入れれば、以降英語のページが読み込まれるタイミングで自動的に日本語に翻訳されます。
翻訳機能にショートカットキーが設定されていないのが不便だなあと思ったのですが、この自動翻訳機能の存在はそれを補ってあまりある便利さです。
できれば他の言語でも使いたいなあ。
あとやっぱりショートカットキーも使いたいなあ。
イマーシブリーダーでWeb本文を抽出。
EdgeというかMicrosoftが近年力を入れているアクセシビリティ機能がイマーシブリーダーです。直訳すると「没入型リーダー」という感じでしょうか。Safariのリーダー機能のようなものですがさらに多機能みたいです。ちなみにOfficeやOneNoteなどにも採用されています。
Webを開き、アプリバーにあるイマーシブリーダーのボタンをクリックすると、Webの記事本文が抽出されリーダー表示に切り替わります。ただWebによって対応していない場合があり、その時はこのボタンは表示されません。
表示を元に戻すには、アプリバーのボタンをもう一度押します。
元々は学習支援のために開発された機能とのこと。特にディスレクシアなどの学習障害を含む発達障害を持つユーザーが、コンテンツに集中し理解するための助けをしてくれる様々なツールが用意されています。
ただ筆者は全盲なので、そのほとんどの機能は利用できないのです。でもWebの本文を抽出する機能だけでも便利です。ショートカットキーで切り替えられればもっと便利なのになあ。と思ったりします
音声読み上げ機能も搭載。
またEdgeには音声読み上げ機能も内蔵されています。
Webを表示させメニューバーの「ツール」>「音声で読み上げる」>「オンにする」を開くと、Webの内容を読み上げます。またWebコンテンツ内でショートカットメニュー(VO+Shift+"M")を開き「音声で読み上げる」から読み上げを開始することもできます。
読み上げ中は音声コントロールパネルにVoiceoverカーソルがフォーカスします。「閉じる」を押せば読み上げを終了、ここから読み上げる段落のスキップや音声の速度、声の設定も可能です。
ちなみにEdgeからの音声はVoiceoverとは独立して再生され、バックグラウンドでも使用できるので、Webを読み上げながら他の作業ができたりします。またイマーシブルリーダーと併用することもできます。
ただ現時点で日本語音声は「Haruka Online」しか用意されておらず、Voiceover拡張音声と比べると音質は良くないのが残念。またイマーシブルリーダーと同様こちらもショートカットキーでは操作できないようです。
メインで使えるクオリティと機能。
まだ使い始めて日も浅く、全ての機能を使いこなせているわけではありませんが、VoiceoverユーザーとしてEdgeはなかなか使いやすいブラウザという印象を持っています。特にレンダリングの速度や自動翻訳機能は、海外のページをよく読む筆者にはかなり快適と感じています。今使ってるMacBook ProがMid 2012なのでChromeはとっても重いのですよね。SafariはVoiceoverの不具合があるしフリーズする海外のページも結構あったりします。Edgeに乗り換えたらかなりストレスが減りました。
ただiPhoneユーザー的にはタブ同期やキーチェーンなどiCloudを経由したサービスは使いたいので、ある程度Safariの必要性は残ります。しばらくはEdgeをメインに、Safariと併用しつつ使っていこうと思っています。ちなみにデフォルトのWebブラウザはシステム環境設定の「一般」から変更可能です。あと筆者が使っているRSSリーダー「Readkit」では外部ブラウザを決め打ちできるのでこちらと組み合わせるのも便利かもしれません。
もちろん使用する環境やブラウザに要求する機能はユーザーごとに異なりますから、万人にお勧めできるわけではありませんが、海外(特に英語)のページを翻訳して読むことが多いならEdgeは試してみる価値は大いにアリでしょう。
以下はEdgeへの要望。
スクリーンリーダーユーザーとしては、ショートカットキーが割り当てられていない機能が多いのが残念。翻訳やイマーシブルリーダーがショートカットキーで使えればもっと快適なのになあ、と思ってしまいます。
あとChromeに実装されている、Web上の画像を解析してテキストや画像説明文を生成する機能もぜひつけて欲しいところです。素人考えですがSeeing AIも使ってる自前のAzure Cognitive ServicesをもつMicrosoftなら難しくないはず。勝手に信じてます。これこそMSの強みだと思ってますしね。
とにかく、正式リリースからなかなかのクオリティを発揮したEdge。完全にSafariを置き換えることにはならないとは思うのですが、従文メインで使えるブラウザに仕上がっているのではないでしょうか。今後の開発にも期待です。